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TODAくらしEXPO「持続可能なまちのつくりかた」トークセッションレポート

不動産屋 × 建築家 × 起業家 × 市長(!)によるトークセッション

2026年4月19日、戸田市立上戸田地域交流センター「あいパル」で開催された「TODAくらしEXPO」。「世界一小さな博覧会」を掲げた会場には、戸田での暮らしを支える制度や取り組み、地域で活動する人や事業者が集まりました。

その中で行われたトークセッションのテーマは「持続可能なまちのつくりかた」。

トダくらし不動産、そしてこのサイト「トダピース」を運営しながら地域のさまざまな活動に取り組む河邉政明、空き家・空き室の再生などを手がけるNPO法人CHAr代表の連勇太朗さん、建築資材ロスの解決に取り組むHUB & STOCK代表の豊田訓平さん。

また、ファシリテーターには、戸田市川岸で「ときどき事務所」を運営するコピーライターかつ、この原稿を書いている森田哲生も参加して、セッションを進行していきました。

菅原市長 「行政と民間、そして市民が一緒になって」

さらにスペシャルゲストとして、菅原文仁戸田市長も登壇。

戸田市で進めている子育て世帯向け住宅の確保や各種補助制度について紹介するとともに、地価上昇によって「住みたくても住めない」という声が生まれつつある現状にも語っていただきました。
「今回のEXPOを、行政と民間、そして市民が一緒になって、これからの戸田の暮らしを考える機会にしてほしい」
そんな、菅原市長の戸田愛漲るメッセージからトークセッションがスタートしました。

河邉 「戸田の面白さは、ハードではなく人にある」

最初のテーマは、「戸田市の魅力」。

観光名所や歴史的建築がたくさんあるわけではない。東京に近く、便利なベッドタウン……戸田は、ともすればそんな言葉だけで説明されがちなまちです。
戸田で生まれ育った河邉自身もまた、「観光資源があるわけでも、建物の文化資源があるわけでもないですよね」と、素直に言い切ります。

「それでも、戸田には面白さがある」と、河邉は戸田の中にすでにいる人たちについて語りました。
東京で働き、東京で面白いことをしている人が、実は戸田に住んでいる。クリエイターや個人事業主、地域で何かを始めようとする人たちが、日常の中に点在している。だからこそ河邉は、戸田の魅力について「ハードではなく、ソフトというか、人なんだろうな」と話します。

何を隠そう、2017年から本サイトをベースに取り組んでいる「トダピース」も、そんな考え方から生まれた活動なんですよね。
古い賃貸住宅を低予算で魅力的に改修し、そこに入居する画家やデザイナー、ジュエリー作家のみなさんが「このまちにいるよ!」と、可視化していく。建物という「箱(ハコ)」を再生するだけでなく、そこにいる「人(ヒト)」を見せ、さらにその人たちから生まれる「出来事(コト)」を発信していく。

河邉が考える「不動産屋」の役割とは、単に部屋を貸すことはなく、人や活動を地域につなぐための入口なのだということが伝わったのではないでしょうか。

豊田 「“東京に近い”をいったん忘れて、戸田そのものを見る」

2026年3月に本社を戸田へ移したという豊田さんが語ってくれたのは、外から来た生活者としての視点。

豊田さんが代表を務めるHUB & STOCKは、まだ使えるにもかかわらず廃棄されてしまう壁紙や床材、タイルカーペットなどの建築資材を回収し、次の使い手へつなぐ会社。年間約40万トンもの建築資材が使われないまま廃棄されているという課題に向き合い、「日本の建築資材ロスをゼロに、資源循環の文化を創造する」ことを掲げています。

戸田への移転についても、地域に建築や不動産、資源循環に関わるプレイヤーが集まり、近い距離で連携できることに可能性を感じたといいます。一方で、生活者として感じている戸田の魅力は、もっと素朴。

「荒川が近い。道幅が広い。街が比較的フラットで、歩きやすい……”東京に近い“という説明をいったん忘れて、戸田そのものを見てみると、実は東京より暮らしやすい部分もあるんじゃないか」と話す豊田さん。利便性ではなく、日々の暮らしやすさそのものを戸田の価値として捉え直す視点が示されました。

連 「ゆったりしているのに、ところどころスパイスが効いている」

連さんは、戸田に住んでいるわけでも、会社を置いているわけでもない「完全なアウトサイダー」という立場から、戸田の魅力を語りました。

「戸田は比較的新しく形成された街で、歴史的な建物や強い観光資源が豊富なわけではない。しかし、だからこそ街区にゆとりがあり、道幅も広く、荒川という大きな自然にも近い。これだけ東京に近いのに、空間的な余白や余裕がたっぷりあるんですよね」と、客観的に戸田の魅力を分析する連さん。

「さらに、街を歩けば、カセットテープの店やカレー店、コーヒーショップ、ジュエリーショップなど、「刺さる人には刺さる」小さなカルチャーが点在している。ゆったり感と自然との近さと、所々にスパイスが効いてるんですよ」。連さんは、そんな言葉で戸田の居心地のよさを表現しました。

会場を巻き込んでいくトークセッション

ここでマイクは登壇者から会場へ。

「トダイルミ」の発起人である阿部さんは、18歳のときに戸田へ移り住んだものの、当初は知り合いがほとんどおらず、「寝に帰るだけ」のような暮らしだったと振り返ります。

結婚し、子どもが生まれ、戸田で暮らしていくことになったとき、阿部さんが考えたのは、「だったら知り合いをたくさんつくろう」ということだったそう。地域のお店や商売をしている人たちと知り合いになると、戸田での暮らしが少しずつ楽しくなっていく。そこで気づいたのが、新しく入ってきた人を受け入れる戸田の空気でした。戸田には都内などから引っ越してきた人も多く、昔から住んでいる人だけで閉じていない。「みんな同じだよ」という感覚で受け入れてもらえたことが、阿部さんにとって戸田の魅力になったといいます。

戸田を拠点にライターとして活動している南原さんからも、似た経験が語られました。

「会社員時代は、戸田で何かをすることはほとんどなかった。しかしフリーランスになり、地域で過ごす時間が増えると、知り合いも増え、街の面白さが見えてきた。まだ知らない面白そうな人がいたら、また知り合いたいと思うようになりましたね」。そんな言葉からも、人との関係そのものが戸田での暮らしを豊かにしていることが伝わってきます。

菅原市長 「何か始めようとするとき、あまり抵抗がないまち」

会場からの話を受けた菅原市長は、「何か始めようとしたときに、あまり抵抗がないんです。これはダメ、あれもダメ、難しい」と最初から閉じるのではなく、“それいいじゃない、やってみましょうよ”とかたちにしていける」と話してくれました。

一方で、市長が課題として挙げたのが、「アフォーダブル」な暮らしが失われつつあることでした。かつての戸田には、都心に近い一方で、比較的手の届きやすい住環境がありました。しかし近年は地価や住宅価格が上がり、その「値ごろ感」が薄れつつある状況なのだとか。まちが魅力的になればなるほど、住み続けるハードルが高くなる……この矛盾が、その後の「持続可能なまち」をめぐる議論につながっていきました。

連 「持続可能とは、“変わらないこと”ではない」

では、「持続可能なまち」とはどんなまちなのでしょうか。連さんはまず、「持続可能って何なのか」という問いそのものを投げかけました。

地価や家賃が上がり、社会環境も大きく変わっている。そんな状況で、今あるものをそのまま維持し続けることが、本当に「持続可能」なのか……むしろ今は、「変わっていかなければいけないフェーズ」なのではないかといいます。

数年前には予測できなかったことが当たり前のように起きる時代。何が正解かは、誰にも分かりません。だからこそ大切なのは、いろいろな人が、小さなチャレンジや試行錯誤を続けること。連さんは、比較的新しいベッドタウンである戸田には、ある意味で「均質さ」があるとも指摘します。同じような広さの住宅、同じような家賃帯、似た属性の人たち。

しかし、社会が大きく変わる時代には、その均質性そのものがリスクになり得る。さまざまなタイプの人がいて、さまざまな暮らし方や商い方があり、いろいろな挑戦が起きている。根付くものもあれば、消えていくものもある……そんな多様な試行錯誤が起き続けることこそ、結果としてまちを持続可能にするのではないか。

「持続可能にする前に、まずはいろんなものを投げ込んでいく」。連さんの発言は、今回のトークの大きな軸の一つとなりました。

豊田 「暮らす人自身が、暮らしのつくり手になる」

豊田さんは、建築資材を扱う立場から、持続可能な暮らしをより身近なスケールに引き寄せました。

住宅は通常、職人や工事会社が完成させたものに住む、という流れになっています。でも、そこに暮らす人自身が、「どんな空間にしたいのか」「どう暮らしたいのか」をもっと考え、自分の手で少しずつ直していくことができたらどうでしょうか。

床が傷んだら直す。壁紙を自分で張る。少し古い住宅を、自分好みにカスタマイズする。そうすれば、家賃や改修コストを抑えられる可能性があるだけでなく、自分自身で暮らしをつくる楽しさも生まれます。

HUB & STOCKが循環させている建材も、そうした「自分で暮らしをつくる」ための資源になり得ます。豊田さんは、住宅だけでなく、イベントや地域活動を含めて「トライアンドエラーをする生活者が増えていくこと」が、未来の戸田の希望になるのではないかと話してくれました。

河邉 「“依存先がたくさんある”ことが、暮らしを持続させる」

河邉からは、もう少し個人的なスケールから「持続可能」という言葉が語られました。

河邉が考えるの持続可能性とは、「依存先をたくさんつくる」ということ。地域に知り合いがいる。自分のことを知っている人がいる。子どものことを知っている人がいる。もし自分が困ったり、何かあったりしたときに、頼れる相手や場所が一つではなく、いくつもある。そんな状態です。

それは、街そのものを持続させるという話以前に、「自分たちの暮らしを持続させる」ために大切なことではないか。と語りました。

ファシリテーターの森田(つまり私ですが)からも、戸田で過ごす時間が増えたことで、「適当に歩いていると大体知り合いに会うようになった」という話をしてみました。

「近所に顔見知りの店があり、知っている人が商売をしていて、子どもたちも地域の大人たちとつながっている。いわば“顔の見える経済圏”が、日常の中にできていく。そうした関係の積み重ねが、安心感や暮らしの豊かさにつながっているんですよね」

そんな実感を会場と共有してみたとき、そこには確かな共感があって、ちょっと嬉しく感じたりもしました。

連 「もっと戸田の使い倒し方を考えられるのではないか」

連さんは、こうした変化の背景として、コロナ禍以降の働き方にも触れました。

かつて多くの人にとって郊外の住宅地は、仕事をする都心と、自宅を往復するための「ベッドタウン」でした。そのため、実は面白い人が住んでいても、平日に顔を合わせることがない。地域に面白い店や活動があっても、それを知る機会が少なかった。ところがリモートワークや副業、フリーランスといった働き方が広がり、街で過ごす時間が増えた。すると、住んでいる人同士が出会い、地域にある店や活動との接点も増えた。

「噛めば噛むほど、郊外の住宅地って実はいろんな人が住んでいて、面白いものがあった」。連さんはさらに続けます。

「それでも、郊外の楽しみ方はまだ十分に発掘されていない。これからもっと戸田の使い倒し方を考えられるのではないか」。

その問いは、会場の人たちにも新しい視点をもたらしたのではないでしょうか。

戸田発の新しいくらし方のかたち。「はねとくも」

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その具体例の一つとして紹介されたのが、トダくらし不動産・河邉と連さんが一緒につくった「はねとくも」です。

「はねとくも」は、1階に街へ開かれたアトリエや商いの場を持ち、2階にプライベートな住空間を備えた賃貸住宅。仕事と暮らしを完全に分けるのではなく、生活の一部を街に開きながら暮らす、職住一体型の住まいです。

これまでにはデザイナーやジュエリー作家、マカロンを販売するカフェなどが入居し、それぞれの個性が街の風景の一部になってきました。

連さんによれば、「こうした郊外での新しいくらし方は、海外の研究者からも注目されている」といいます。実際、パンデミック以降のライフスタイルやコミュニティのあり方を研究する中で「はねとくも」が紹介され、海外でも事例として取り上げられたことも。戸田という郊外の街で行われている小さな実験が、実は世界的にも関心を集めるテーマとつながっている。と言えそうです。

連 「地価が上がるほど、まちは面白くなくなる?」

トーク終盤、連さんはもう一度、地価上昇の問題に話を戻しました。

「地価が上がることは、土地を持っている人にとっては資産価値が上がるという意味で、決して悪いことではありません。一方で、世界各地では、地価や家賃が上がることで、小さな商いをする人や若い世代、新しいことを始める人が住めなくなり、結果としてまちが面白くなくなるという現象も起きているんですよね」

だからといって、地主が単純に家賃を安くすれば解決するわけでもない。相場通りの住宅だけをつくり続ければいいわけでもない……そこには、不動産だけでは解決できない複雑なジレンマがあります。

だからこそ、空き家や空き室、相続した土地などについて、「どうしたら街の価値につながる使い方ができるのか」を地域で考えていく必要がある。戸田で暮らし続けられる環境を守ることと、戸田らしい面白さを守ることは、実は同じ問題なのかもしれません。

まちをつくるのは、結局「まちを面白がる人」なのかも知れない

大いに盛り上がった今回のトークセッション。その締めくくりとして、改めて「まちづくり」という言葉について考えてみました。

建物をつくること、イベントを開催すること、観光資源を生み出すこと。もちろん、それらもまちづくりの一部です。

でも、どんなに景色がきれいでも、どんなに立派な施設があっても、知っている人が一人もいない街で暮らし続けられるだろうか。

この場を通じて私があらためて感じたのは、結局「人なんじゃないか」ということでした。この日の会場にも、市長がいて、地域で商売をしている人がいて、クリエイターがいて、外から戸田に関わる人がいて、子どもがいて、着ぐるみ(!?)までいる。

戸田には、大きな観光資源があるわけではなけど。誰もが何かを始められる余白がある。新しく来た人を受け入れる空気がある。面白い人が、すでにたくさんいます。

そして、このTODAくらしEXPOのような動きがあって、まちにくらす人たち同士がつながり始めている。

そこで重要なのは、きっと、「戸田をもっと面白がれる人」の存在なんじゃないかなと。そんなことを感じる、充実した時間となりました。